昭和18年に完成し、沖縄戦に特攻出撃した「白鷺隊」が編成された姫路海軍航空隊(鶉野飛行場)。
令和2年、加西市様が当時(昭和20年5月)の練習生・周辺に住んでいた人々の証言や、その方々が残していた写真や資料などをもとに再生古地図「姫路海軍航空隊再現図」を作成され、このたびその再生古地図をもとにジオラマを制作・完成されました。
当時を知る方の記憶を呼び起こすだけでなく、当時を知らない若い世代へ平和の大切さを知るきっかけにもなっているジオラマについて、市の担当職員やジオラマが展示されている「soraかさい」学芸員の方に想いや制作秘話をお伺いしました。
鶉野飛行場跡ジオラマ制作に至った経緯と関わった方々を教えてください。
また、再生古地図制作は、このジオラマ制作にどのような影響を与えましたでしょうか?
令和4年度に、鶉野フィールドミュージアムの歴史遺跡を活用したデジタルコンテンツ制作業務におけるプロポーザルを実施したところ、デジタルコンテンツの制作に合わせてジオラマの制作を含めた提案をされた事業者様(株式会社森ビル)があり、その提案の評価が高く、契約候補者に決定したため、ジオラマを制作することとなりました。
ジオラマを制作するには、第二次世界大戦当時の地図等の資料が必要ですが、当時の詳細な資料が現存していません。
しかし、令和2年度事業の鶉野飛行場跡周辺古地図再生プロジェクトにより、資料や聞き取りをもとに、昭和18年当時の復元図が作成されていましたので、この復元図をもとにジオラマを作成することができました。
鶉野飛行場再生古地図
ジオラマにはどのような想いが込められているのでしょうか?
ジオラマは、滑走路南端の昭和18年当時の姫路海軍航空隊と北条線法華口駅の様子を、1/800の縮尺(2m×1.35m)で再現しています。
ジオラマは、滑走路跡上の北端に位置する加西市地域活性化拠点施設「soraかさい」内に設置していますが、ジオラマと現在の位置関係を理解しやすいように、ジオラマ内の滑走路が現在の滑走路跡上に平行に位置するように、ジオラマを設置しています。
このジオラマが鶉野飛行場跡の全体像を俯瞰してもらう一助となることで、来館者のより深い学びが可能となることを期待しています。
鶉野飛行場滑走路跡地
ジオラマ完成後のご感想をお聞かせください。
平面の地図で観るよりも、立体的なジオラマで観た方が、当時の雰囲気が分かりやすいと感じました。
soraかさいでは、飛行機模型や映像コンテンツでの展示・解説が中心でしたので、展示内容の幅が広がったと思います。
製作された方にとっては、当時の明確な資料が存在しておらず、建物等を立体的に制作することが難しかったようです。
広い飛行場全体をジオラマにすると、建物や飛行機が非常に小さくなりますが、それでも識別できるように細部まで精巧に作成していただきました。
近くで見ると精巧に作られていることが良くわかる
鶉野飛行場跡 平和教育コンテンツのWEBページを拝見致しました。
現在、平和学習コンテンツの一環としてもジオラマをご案内されているかと存じますが、具体的なご活用内容を教えてください。
加西市の鶉野地区で起こった史実を正しく後世に伝え、平和について学び考える場を提供することを目的に、soraかさいと周辺に数多く残る戦争遺跡群である鶉野フィールドミュージアムを整備しています。
観光ガイドのスタッフが、soraかさいと鶉野フィールドミュージアムを周遊するツアーガイドを行う場合、soraかさいと鶉野フィールドミュージアムの関係性を説明するために、ジオラマを活用しています。
ご来館者の反応はいかがでしょうか?
来館者の中では特に高齢者の方が熱心にジオラマを見学されていることが多いですが、修学旅行の館内見学の自由時間になると、ジオラマの周りに子どもたちが集まっているのもよく見かけます。
展示している実物大飛行機模型と鶉野飛行場の関係性を理解していただいているように思います。
当時を知る方がご来館されたことはありますか?また、どのようなご感想をお持ちでしたでしょうか?
高齢者の来館者も多いですが、当時のことを知る来館者であったかどうかまでは分かりません。
当時の関係者にジオラマの写真を見てもらったことがありますが、一部記憶と違う部分があるとの指摘もありました。(ジオラマは当時の記憶を呼び覚ますアイテムとして有効な部分もあると感じます。)
ジオラマは戦闘機実物大模型の近くに設置されています
今後どのような方にこの鶉野飛行場のことを知ってもらいたい、ジオラマを見に来て欲しいとお考えですか?
平和学習は全ての人々にとって重要なものですので、修学旅行等で訪れていただく子供たちだけでなく、加西市の住民の方々、加西市以外からの来訪者を含め、多くの地域の全ての世代の方々に、鶉野地区で起こった史実を知っていただき、平和について学び考えていただきたいと考えています。
今後のご活用につきまして、ご検討されている展開等ございましたらお聞かせください。
ジオラマの防空壕を見ると点の穴にしか見えず、詳細が分かりません。
今後、防空壕跡等の戦争遺跡のデジタル保存を進めていきますが、戦争遺跡のデジタルデータをジオラマと関連付けたコンテンツを制作し、デジタルデータで戦争遺跡の詳細を展示することで興味を持っていただき、実際に鶉野フィールドミュージアムを周遊していただけるような仕組みを検討しています。
https://www.sorakasai.jp/
〒675-2103 兵庫県加西市鶉野町2274-11
TEL:0790-49-8100 FAX:0790-49-0710
営業時間:9:00-18:00
休館日:毎月第2・4月曜日(月曜日が祝日の場合は翌平日)、12月29日~1月3日